【開催レポート Vol.1】
おおいた事業承継・引継ぎ
フォーラム2025 in 別府
未来へつなぐ経営のバトン。
別府市から始まる、新たな挑戦の記録
開催概要
  • 日時:2025年11月14日(金) 13:00~15:00
  • 会場:別府国際コンベンションセンター/ビーコンプラザ 3階 小会議室31(別府市)
  • 対象:経営者、後継者、個人事業主、創業希望者、支援機関(金融機関、商工団体、士業)の方など
別府会場 アーカイブ動画 (1時間53分)
Loading...
講演・トークセッション レポート
■ 開会挨拶
 開会の挨拶では、県内における事業承継の重要性と、本フォーラムが地域経済の活性化に果たす役割についてお話しされました。
井上 勝美 氏
大分県 商工観光労働部
経営創造・金融課 課長
 皆さん、こんにちは。本日は、本フォーラムにご参加くださりありがとうございます。
 皆さんご存じのように、経営者の高齢化と後継者不在は深刻な問題です。帝国データバンク大分支店の調査では、昨年データで社長年齢の平均が60.3歳。後継者不在の企業が61.3%と高どまりしている状況です。そのような背景もあり、企業の休業、廃業、解散件数は535件と過去最高となっています。そのうち黒字企業は7割あり、黒字でありながら事業継続が厳しい状況です。
 廃業は、その地域の雇用の場が失われ、また、技術ノウハウや地域活力が失われてしまうので、全国的にも近々の課題となっています。
 本日は、その近々の課題である事業承継を考えていただきたい、また機運を高めていきたいという目的で開催しております。
 国をはじめ、事業承継を後押しする支援策はさまざまありますし、支援機関の方もいらっしゃいます。特に事業承継は、準備から実現までに長い時間が必要です。早めの取り組み、早めの準備が重要となります。
 経営者の皆さまには、まだまだ先の話として考えるのではなく、身近な支援機関にご相談頂きたいと思います。必要な支援を受けながら、円滑な事業承継を実現し、事業価値を次世代に引き継いで頂きたいと思っています。皆さまにとって有意義な会となりますことを祈っています。
■ 基調講演
テーマ:『事業承継・M&Aの最新動向と、未来を託せる後継者の見つけ方』
 中小企業診断士として数多くの成功事例を持つ宮地氏より、実践的な知見が共有されました。
宮地 繁彰 氏
株式会社事業承継パートナーズ
代表取締役
経営者の高齢化と事業承継の変化
 全国の社長、経営者の平均年齢は一貫して上昇しています。2000年時点で50代の社長が全体の2割を占め、2005年にはスライド式に年齢が上昇し、2010年には分布の中心が60~64歳に、2015年で65~69歳が18%で、このあたりから事業承継の問題が国の課題となってきます。2019年は平均が62.16歳。2020年には、団塊世代が70代になって現役引退し、経営者年齢は60~64,65~69,70~74歳に分散して事業承継や廃業による引退が起こっています。
 後継者不在の場合では、2020年にはおよそ5万社が休廃業しており、事業承継を望んでいる経営者がいながらも後継者が見つからず、廃業する経営者も出てきています。
 1983年以前は9割以上が親族内関係での承継でしたが、2003年には親族以外が38%となっています。価値観が大きく変わり、従業員への承継、第三者承継と呼ばれるM&Aが増えてきています。
事業の継ぎ方~それぞれのメリットとデメリットとは~
 事業承継のパターンとしては、親族内承継、従業員承継、そして第三者承継(M&A)があります。
「子どもに渡す」親族内承継 - 親子間だからこそ起こる問題
 親族内承継での課題は、借入が多額になる点です。多くの経営者は、生涯現役で投資をし続けながら事業を運営します。ご自身が引退する頃には、多額の借入返済時期が重なり、その借入を子どもに引継げないという問題に直面します。弊社が携わった案件でも、借入が多くて子どもや社員に引継げない事例が度々起こっています。
 2つ目は、経営者の引退後の資金確保です。自宅など、個人資産の多くは会社の運転資金のための担保に入れるといった財産一体化があり、引退後の老後資金を確保できないという問題があります。
 3つ目は、親子間のコミュニケーションの問題です。わが子だからこそ厳しく接してしまう。また、親世代の常識が子ども世代の常識と異なり、価値観が合わないことがあり、社員の手前や地域の手前、関係が悪化してしまうというケースがあります。
 4つ目は、事業が時代に合わなくなってきた、売上が伸びなくなったという問題。デジタル化によってスピード感が変わり、経営者自身が今まで苦労してやってきた事業を、多額の借金をしてまで継がせたくないという親心から、なかなか承継が進まないケースもあります。
 データから読み取れば、親族内承継が収益も高いという統計もあります。会社のルーツを伝えていくためには、やはり親族内承継が最も無難かと思います。
「信頼できる社員に託したい」従業員承継
 従業員承継は、親族内承継が難しい場合に社外の方よりも安心して承継しやすく、注目度も上がっています。
信頼のおける従業員に承継するメリットは大きい
 親族承継の場合、子どもがすでに自分の人生をスタートしていたり、親子の葛藤で承継の意志を示さないこともあります。従業員承継では、長年に渡り仕事をしてきた働きぶりをみて承継を判断することができ、会社のことを熟知している点が最大のメリットです。会社の中の事はもちろん、取引先からみても安心して取引できるため、一からスタートすることがなく引継ぎ時間が短くできるメリットがあります。
 実際のところ、承継は「人」だと思っていますので、特に社長の理念などを共有、承継することが比較的容易で、企業文化を引き継ぎやすく、社長の考え方と異なる意志決定や行動をするということは少ないと考えられます。社員側も、現場の人が経営者になることで安心感があり、肯定的に受け入れられやすいでしょう。
従業員とはいえ他人 - 金銭面や人となり、やる気が問題になることも
 課題としては、従業員承継においても高額な株式買取が発生する点です。親族ならば贈与なども考えられますが、従業員は譲渡・買取することになります。場合によっては、純資産が上昇し高額な株価の買取資金が必要となります。すると、金融機関の融資に依存することになりますが、従業員への融資は厳しいことが多いです。
 株式買取の資金を準備したとしても、保証力と担保の問題が起こります。金融機関が保証などを求めることが多いので、従業員にその信用力や担保がクリアできるのはなかなか少ないです。
 従業員から経営者になった途端、ステータスが変わることで急に態度や性格も変わり始めた。従業員だった人が、交際費などを多く使ってしまった。というケースもあります。社員の方の見極めも重要になってきます。
 従業員から経営者として新たなステージに変わったことで、それまで以上の頑張りを求められることになりますし、社長の仕事と責任が求められます。従業員の意思確認は十分に真剣に検討させる必要がありますし、数か月程度の時間が必要になるでしょう。
第三者承継(M&A)
 買い手にとって重要なのは自社の成長戦略です。商品力や営業力、信用力など自社にはない、持っていない価値を求め、相乗効果が見込めるかを重要視します。
買い手側の目的と事業が合致しているか
 どの地域や産業でもそうですが「人がいない」という問題は根強く、M&Aでも人を目的として社員が良いかを一番の基準にされる場合が多いです。やはり人が重要になってきているかと思います。
 同じ地域・業種でシェア拡大を狙う以外に、関連業種で伸ばしていく、横展開で広げていく形があります。異業種へ新たに参入して、経営者として進出して相乗効果(シナジー)を狙うケースです。シナジーはプラスの面がありますが、逆に客をとりあってしまったり、さらなる投資が必要になることもありますので、マイナス面にも考慮が必要です。
事業資金を明朗に - 価値の可視化は早急に対策を
 売り手にとっては、従業員の雇用維持、そして取引先企業の安定、代表者個人としての経営者個人保証・物上保証、経営者個人の生活資金の確保にあります。私が関わった案件では、実に約40%が債務超過、45%が赤字経営です。後継者不在が表面化してやっと事業承継しようと取り組み、M&Aを検討するという経緯がよくあります。実際に買い手の希望としては「債務超過がない、赤字経営ではない」というところがポイントですので、早めに着手するのが大事でしょう。中小企業の場合、経営者自身の属人的な魅力によって企業が確立していることが多いため、いかにしてその事業を引き継ぐか。また、買い手にとっては事業価値が数式的なことでしか判断がしづらいため、事業資金等の回収が可能なのかどうかが判断基準となってきます。
譲渡方法によって継承後のインカムが決まる
 M&Aの出口計画としては、①株式譲渡により経営者が退職金と譲渡金、一定期間の顧問報酬を払い、経営者担保提供と責任を解除する。②実質的な価値が認められない場合も、保証解除と同時に顧問に入ってもらい安定した顧問報酬収入を得るという方法があります。あるいは、③事業の一部だけを売却するという承継もM&Aの場合にはあります。
 どの道を選ぶにしても、経営者自身の未来設計が必要です。中小企業社長の場合、特に自分の会社と個人資産が判別しづらくなりますので注意しましょう。
経営者自身の人生設計を
 年金世代の『2千万円問題』が話題になりましたが、60歳代の資産が満たない方が約67%。60代までに資産を蓄えても、引退すると年金以外の収入が減少または途絶えるため、自己資金を切り崩しながら生活することになります。経営者の皆さんも引退後の生活について真剣に考えましょう。
各種制度を利用して退職金や引退後資金を確保
 倒産防止共済(退職金財源)などもありますが、自社支払いによる退職金や(小規模企業)共済制度掛金による退職金、所有する自社株式を譲渡した際の譲渡金のような、資金確保の手立てがあります。事業承継した場合に、不動産譲渡をするよりも会社として時価評価して株式譲渡をしたほうが、資産価値として優遇されるメリットがあったりしますので、いろいろな手段を考えながら事業承継の際に選ぶと良いでしょう。
引退後生活のリアル - 生活資金は長期計画でプランニング
 引退後にはいくらの老後資金が必要か計算してみたところ、持ち家ありで夫婦2人の平均生活費が23万5千円程度。そこから20年間生活したとして必要な資金は5400万ほどになります。これは最低限の生活のため、ゆとりの乏しい生活ですのでさまざま考えながら資金計画を立てるようにしましょう。
 引退後の収入源としては、公的年金、私的年金、個人年金、顧問料等の給与、家賃収入などがあります。これらを考えながらセカンドライフの生活を設計していくようにしましょう。一例「ゆとりある老後の生活として20年間で9700万円」という資産計画もあります。夫婦の年金のみでは4000万円以上のマイナスとなり、その差額を退職金や譲渡金でいかに計画するかが大事になります。
まとめ
 承継を成功させるために一番重要なのは気持ちの問題です。会社の将来をどのようにするか。今は誰にも引き継ぐことができないとしても、30年後に会社がどのような形になるのか…。個人の思いと会社の思い、そして考え方や価値観を明文化する必要があります。そのうえで将来を見据えて明らかにしていかねばなりません。
 誰が引き継ぐものなのか、誰が実現してくれるのか。それはやはり“人”だと思います。誰にに承継してもらうかが非常に重要です。事業承継には準備と時間を要しますので、ここを考慮しながら早めの判断をしていくことを強くお勧めします。
 それぞれに問題、メリット・デメリットがあります。私としては、大分のような地域であれば親族内承継が吉だろうと思っていますが、お子さんがいない・子どもが近くにいないといったケースもあり、選択肢の幅として第三者承継を検討されるといいでしょう。
 事業承継を全く考えていなかった方は、「早めに準備をしておいたほうがいい」と自分ごととして考える機会になったことでしょう。おぼろげに考えていた経営者の方にとっても、具体的なイメージを描きやすい内容でした。
 事業の継続と自身の今後の生活。現実と向き合い、問題を解決していく一歩を踏み出すきっかけとなりそうな講演でした。
■ トークセッション
テーマ:『経験者が語る!事業承継・M&Aのリアルと成功の秘訣』
 今回登壇したのは、別府市で椎茸生産・卸・販売事業を行っている、株式会社やまよし代表取締役の河内由揮(かわちゆうき)氏と、福岡市で広告、スポーツ、ECなど多角的な事業を展開している、株式会社LARKSの今村誠(いまむらまこと)氏です。河内氏は、先代である父から家業を引き継いだ親族内承継について、今村氏はM&Aにより事業拡大を図る第三者承継について、それぞれの立場から経験に基づいた思いや考えを赤裸々にお話くださいました。
 ファシリテーターは、基調講演につづき、宮地繁彰氏が務めました。
河内由揮氏
今村 誠 氏
トークセッションの内容
事業承継に興味をもったきっかけや背景
「継いでほしい」父の思いを考えて帰郷
宮地繁彰氏(以下宮地):まずは親族内承継について、河内様にお話を伺います。バンドマンとして活動していた人生から31歳でUターンし、家業の椎茸卸を継がれました。その背景にどのような思いがありましたか?
河内由揮氏(以下河内):実は家業を継ぐ気はまったくありませんでした。ですが、子どもの頃から周りに「いずれやるんだろう」と言われていましたね。東京に住んでいた私のところに、仕事の都合で上京した父が訪ねてきて「体がやばい、倒れそうだ。帰ってきて欲しい」と頼まれたのがきっかけです。今でも元気ですが(笑)
妻と相談して、3か月後くらいには帰省しました。父も、引継ぎと説得に時間がかかる・家の仕事を覚えてほしいというのはあったかもしれません。ただ、家に戻ることは嫌ではなかったので、両親と一緒にいられるのが楽しそうだというシンプルな気持ちでしたね。
家業との相性が良い業態をM&Aで
宮地:次に、第三者承継についてM&Aの買い手側の視点から、今村様にお話しを伺います。興味を持ったきっかけは?
今村誠氏(以下今村):もとは福岡で40年以上看板広告業を営む企業ですが、知り合いでスポーツ店オーナーをなさっていた知り合いから話をいただいて事業承継しました。「子どもはいるが継がない」ということで、「看板業とスポーツ業は相性がいいかもしれない」というノリと直感で決断し、2年後に成約したのがきっかけです。
宮地:お二人が事業承継を考えられたきっかけを伺いましたが、私も「継ぐ人がいない」という相談をお受けすることがあります。ある会社は、黒字で社員も優秀だが株の買取が難しく、ネットワークが整っているのに後継者がいないという状況で、結局廃業となりました。社員だけでなく関係取引先にも負担が起こりますし、廃業する企業があるのはもったいないと感じて私は事業承継の会社を立ち上げました。なかでも重要なのは、“人”だと思っています。経営していくには承継した後が大事ですので、次の始まり方・引継ぎ方は重要ですね。
事業承継で重視した点
父の人となりと別府への思いに動かされて
宮地:河内様にとって、ご自身が事業を引き継ぐ決心をした理由やターニングポイントがあれば教えてください。
河内:椎茸のコマ打ちをして菌を種付けし山肌に寝かす、という椎茸生産風景を見て父が言ったひとことですね。「この風景がなくなったらいややね」と。生産者たちの平均年齢は74歳で、私も仕事をし始めて高齢化の実態を感じています。父には、会社というよりも地域を考えて取り組むものがあり、それを感じた時から変わったかなと思っています。私も別府のために何かやりたいという思いはありますし、家族の思いがあってそのような会社が地域のために何か継承していく…。父のひととなりを感じた時に、がんばりたいなと正直に思いました。宮地さんがおっしゃるようにやはり“人”で動くと思いますし、私も従業員のことが好きですし。地域のことを考えながら、何かやらなければと思ったのが大きかったですね。
宮地:転換期というよりもお父様の姿に惹かれていったということでしょうね。
実際に会って「知る・わかる」ことが大事
宮地:今村様はターニングポイントがありましたか。
今村:看板業が始まりですが、違うジャンルの業で相談を受けますし、業種にこだわりはありません。3年前には、福岡空港に近い郵便局の局員向けコンビニを承継しました。その業界経験もなかったのですが、売り手側の条件や状況、携帯番号までが、Web上で正直に想いと文章で公開されていたのを今でもハッキリ覚えています。熊本にお住いの70代のオーナーで「100件以上の問い合わせがあって疲れた、もう応募を止めようか」と言われたので「すぐに行きます」と熊本まで会いに行ったのが2022年8月の頭。結果、盆前には話を進めて9月1日にリニューアル開店しました。やはり、「すぐに来てくれた」というのが決め手だったようですし、今の時代、オンラインでも相談はできますが会わなければわかりませんね。私は会いにいく派です。
遠いところでは京都にも行きました。経費はかかりますが、いい方々に出会うための投資。怪しそうな人でも、話してみるとお互いにわかる部分もあります。電話で言っていることと実情が違う事もありますし。悪いことも良いことも両方を経験していますね。
宮地:事業承継は「誰に会社を託すか」が重要となります。継承はゴールではなく、その後が大切です。買受の価格は大切ですが、託して社員や取引先のために貢献できる人でなければ、企業存続は難しいと思っています。今のご時世、社員は不要だという承継人はなかなかいませんが、実際にM&Aをやった後に社員が半数以上いなくなったという事例もあります。それから、早めの交代。いかにスピード感を持って事業承継を体系化できるかが重要です。
承継の難点、悩んだことについて
親族ならではの「子」立ち位置が難点に
宮地:承継を決める上での難しさや悩んだポイントについて伺います。河内様はいかがですか?
河内:やはり父が築いてきた関係性ですね。客観的に、相手の取引先の方にとって、私は子どものままなんですよね。それを父とも話をしていました。
宮地:私も経営者からの相談で、お父様がご子息に承継されたけれど、その会社には番頭がいらして子どもの時から知っているから「子どもに言われたくない」という思いがあり、結局、息子さんが別の会社を立てたという話があります。
河内:そこまでではないにしても、やはり悩ましいです。長く働いてくれている方が思うこともあるでしょう。帰ってきて数年後に「継ぐのか?」といわれることもありましたけれど、笑って切り抜けています。
企業をまるごと引き受けることの難しさ
今村:スポーツ店を継ぐ前に取引ができていても、引き継いだ企業は新規事業者だから取引先や仕入れ先の口座を作れない、ということがありました。スポーツメーカーとの信用が口座開設の条件になりますし、潰れるお店も多いので保証金が必要になるケースもあります。なので、口座開設ができるかどうか事前に確認するようにしています。商業施設に出店していても「業者引継ぎはできない」ということも起こりえます。すると、一度空にして再度店舗を整えなければなりませんし、フランチャイズならば加盟金も必要になります。
ある熊本のネイルサロンで話を聞いていたところ、従業員にはまだ何も話をしていない段階で、オーナーに信頼があって働いている従業員ばかりだったので「知らない、聞いていない、辞めます」となったこともありました。
事業承継に専門家・支援機関の活用法
専門家の手厚いサポートに助けられた
宮内:事業承継における専門家・支援機関の具体的な活用法についてですが、河内様はどのような専門家にサポートしてもらいましたか?
河内:かなり助けていただきました。私が見たことがなかった、パンドラの箱的なお金の動かし方の部分。そこは父から引き継いでいませんので、仕組みだったり経理を進めながら決算書の見方を徹底的に教えて頂きました。なんとなくわかっていたけれど「どうやって来期は動かしていくのか」といった部分で、会社の中側から見るのと信頼してもらって外から見られるのは違う、というのはかなり効きました。周りから見ても納得できるような仕組みにしておかなければいけない。テクニカルな部分が理解できたのは、支援機関のサポートが大きかったですね。特に、財務面を見た時に「すごいものを見てしまった」という感覚になりました。そこからどうすればいいか、アドバイスなしでは難しかったと思います。金融機関としても、私が引き継ぐ確約がなければ話はできないと思いますので。そこから、妻を交えて事業展開についても勉強しました。「家業の椎茸ならこのような分野も行ける」など考えて動かすきっかけも支援を受けて頂きましたね。そうでなければ、引き継いでなんとなく会社を続けていたと思います。
専門サイトを活用して情報収集
宮地:商工会でも丁寧に優しく教えてくれるといった声がありますし、活用頂きたいです。今村様はどうでしょうか。
今村:基本的には今までお付き合いがないのですが、今回この会の登壇機会を頂いたのは、M&Aサテライトサイト、バトンズ様からのご紹介です。以前にM&Aについて取り上げたTVを見て存在は知っていたのですが。いろんなサイトがある中で、見やすさや使いやすさからして、私はバトンズ一択ですね。知らない方は、是非ご覧ください。
事業承継を考えている方に対してのアドバイス
「継ぐ」だけでなく「挑戦」できる
宮地:これから事業承継を考えられる経営者さんに向けて、お二人からアドバイスをおねがいします。
河内:バンドマンとしてツアーをしていて別府に帰った時、父との会話で「この会社は地域の資産だ」と思ったことがあります。地域柄もいいですし、地元にいたままでは見えなかったことが見えたのかもしれませんが、会社を継ぐことでいろんな挑戦ができるということ(M&Aで佃煮製造所を作っていますが)可能性が無限大だということをお伝えしたいですね。私は飽き性なのですが、バンドとこの椎茸業は続いています。長く続けていきたいですし、一旦自分で決めたゴールを目指すということもやっていて、また違った感じで頑張れれば、承継は楽しいなと思います。
繋がりとタイミングを大切に
今村:M&Aは一長一短。経営状況は別として、一からの新規ではなく基盤があるのはいい点ですね。実は3年前に継いだ博多のコンビニから、現在では3店舗経営しています。1店舗目がなければやっていないでしょう。博多のコンビニが入っていた郵便局の局長が転勤されて、「転勤先にコンビニがない」と相談いただいたタイミングもきっかけになっています。何が起こるかわからないですね。スポーツ店は方向性を変えてネット中心にやっていますが、通販事業部もスポーツ店をやっていなければ派生していませんからね。興味が湧いたら連絡を取って会ってみることと、タイミングですね。早めに行動して会うことで、相手の印象も変わりますから。
宮地:事業承継は、経営者ならば誰にでも起こる問題です。親族内、従業員、第三者と3つの承継の形がありますが、それぞれにおいて選択肢を広げておくことも重要です。今後の会社そして経営者様個人の未来について考えていただければと思います。
■ 別府市の取り組み紹介
テーマ: 別府市における事業承継支援の取り組みについて
 紹介いただいたのは、市職員として20年以上勤務している観光・産業部産業政策課 ツーリズムバレー推進係主査 堺田 淳 氏です。堺田氏は、各課でさまざまに支援・経験を積んで令和2年に現在の課へ配属となり、令和6年度から事業承継の支援を行っています。
堺田 淳 氏
講演内容
別府での事業承継相談会実施について
令和3年度より取組スタート
 別府市は、令和3年度より事業承継相談をスタートしました。大分県事業承継・引継ぎ支援センターと連携して年2回の相談会を開催しました。相談実績は14件、弁護士や税理士相談会を同時に行ったことで実績につながりました。令和4年は2日、令和5年で4日、令和6年が6日、令和7年に12日の相談会日程を組み、それぞれ8件、7件、19件、11件(会当日までの実績)の相談実績がございます。今年度は買い手側からの相談もありました。
市職員同席でヒアリング、相談者に配慮も
 令和6年度までは商工会議所にて行なっていましたが、今年度から市役所会議室を使用しております。これは、「商工会議所での承継相談会開催日に出向くよりは市役所の方が傍目に行きやすい」という事業者側への配慮でもあります。昨年度、今年度の相談では私が同席して、相談内容の声や悩みについて直接お話を伺っています。
別府市事業者の実情
 令和5年度に別府市で事業承継アンケート調査を実施しました。基礎資料を得る目的で11月~12月に実施し、市内3,866事業者を対象に承継の予定や対策についての内容となっています。有効回答数は860件、回収率22.2%です。結果は市の公式ホームページで公開しています。
経営者の高齢化が深刻な問題
 このアンケートを実施したことで、事業承継が感覚ではなく数値で把握し捉えられるようになりました。住む街の実態を知り、自分ごととして事業承継を考えることができます。
 『2023年度版中小企業白書』によれば、全国的に50~74歳までの幅広い年代に経営者年齢が分散していることがわかりますが、別府市での経営者年齢の半数が60歳以上で、事業承継に向けた準備を3分の2程度の経営者が「できていない」と回答しています。創業してからの業歴は半数以上が30年以上、常勤従業員数でも半数以上が5名未満の小規模事業であり、従業員の生活を守らなければならない、というのが別府市で起こっている現実です。
現実的な承継を早期に検討すべき
 事業承継の予定については、約3分の1が親族内承継を予定。ただ、考えているものの3分の1が「5年以内に予定」しています。また、承継を考えているが後継者がいない企業が10%程度あり、それ以上に後継者や後継者候補がおらず廃業を検討している事業者があるのが懸念点です。その理由は、後継者不在。しかも5年以内に廃業をしようとしている会社が36.6%という結果があります。全国平均グラフを俯瞰で見ている場合ではないような、衝撃的な事実です。
早めの相談を案内する方法に課題も
 市場の先行きが不透明・経営状況が厳しい・適切な後継者が見つからない・相続問題等といった検討課題が見える中で、関心のある事項としては、後継者の育成と支援、選定、贈与税などですが、これらは支援相談の時に概ね整理できる項目です。
 アンケート項目の最後に「大分県事業承継・引継ぎ支援センターへ情報提供することに同意したうえで、相談を希望する」欄を作成し、チェックが入った10件へ連絡を取りました。また事業者訪問も行い、承継についての個別相談の連絡をしました。50社に連絡を行い、相談会含めて150組の相談枠を設定しましたが、日程があわずに相談熱が冷めてしまうということを考えると、事前に予約を取り付ける必要性を感じています。
相談会利用の促進に向けて
 「いずれやらなければならない」と思いつつも事業承継は優先順位が低く、その日の売上や業績が最優先となってしまうのは仕方がないことです。そのため、相談会に出向けないといった声や、相談予定直前でのキャンセルも増えると肌で感じました。
希望者が確実に相談に来られる仕組みを
 とはいえ相談したい方はいますし、こちらからの連絡がちょうどいいタイミングであれば予約にも至ります。結局は、相談したい時に相談会があることが大事ですので、今年度は毎月開催し、相談枠を事前に抑えておくようにしました。令和6年度では個別相談事業者7者、相談回数16回、親族内の事業承継計画作成を1件、第三者承継準備に2件至っています。今後はもっと回数を増やしていきたいと考えています。
県外事例や専門家の意見も参考に
 そして、わが町で何が支援になるか、ニーズに合った支援を行うため県外視察を行いました。また専門機関や金融機関からも話を伺いました。事業者の情報管理では、承継に関する話を支援機関が単独で聞く必要があるなど、当たり前のことと思われるようなことも改めて再認識することができました。
 事業承継・引継ぎ支援センター相談員や各分野の専門家が、多く事業承継の案件に関わり、たくさんの情報や選択肢を得られるのを目の当たりにして、支援の必要性をより強く感じているところです。
事業承継の支援策
 仮に1つの事業者が廃業してしまうと、関係する事業者も影響を受けます。また、これまで別府市を支えてくれた事業者の皆さんの廃業をそのままにすれば、街から活気が失われ衰退していってしまいます。昨年、別府市は市政100周年を迎えました。事業を絶やさず事業を繋いで、新しい別府の魅力を創造していただきたいと思っています。
支援機関との連携
 地元の事業を地元の事業者で繋いでほしい。そのために、令和7年度は、相談会を増やし補助金制度を創りました。各支援機関にも、街全体で課題を解決し連携していくことに賛同頂き、全9者で令和7年7月15日に「別府市事業承継連携支援に関する協定」を締結しました。
継続性があり取りこぼしのない支援を
 今後は、「切れ目のない支援」を行ってまいります。金融機関や商工会議所で支援が必要な方に対して声掛けいただき、相談会のご案内をしながらセンターを中心に支援を行います。第三者承継についてはマッチングまでフォローします。通常であれば承継までの支援ですが、承継後のフォローアップについても行いたいと考えています。そして「モレのない支援」として、金融機関のお客様、商工会議所会員様や所属していない方には市役所からの広報により周知していきます。各専門の強みを生かして別府市がハブになって支援していくことが必要だと感じています。
別府市の事業承継の下支えとして
 ある相談に同席した際、支援員が事業者さんに向けて「承継を進めるなら早くやっていきましょうね。『今より早いときはない』ですから」という話をしておられました。支援は早く取組まなければ手遅れになってしまう、今始めなければいけないよ、というふうに聞こえ、背中を押してもらいました。今後もさらに充実した取組を実現してまいります。
主催・共催
主催
  • 大分県 商工観光労働部
    (委託先:大分県商工会連合会)
共催
  • 大分県事業承継・引継ぎ支援センター
 
ご相談は、大分県事業承継・引継ぎ支援センターへ
© 2025-2026 おおいた事業承継・引継ぎフォーラム事務局
(大分県商工会連合会内)