【開催レポート Vol.3】
おおいた事業承継・引継ぎ
フォーラム2025 in 佐伯
未来へつなぐ経営のバトン。
佐伯市から始まる、新たな挑戦の記録
開催概要
  • 日時:2025年12月12日(金) 13:00~15:00
  • 会場:佐伯東地区公民館 集会室
  • 対象:経営者、後継者、個人事業主、創業希望者、支援機関(金融機関、商工団体、士業)の方など
佐伯会場 アーカイブ動画 (1時間56分)
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講演・トークセッション レポート
■ 開会挨拶・基調講演
 別府会場(2025年11月14日開催)とほぼ同じ内容ですので、具体的な講演内容は、別府会場の開催レポートをごらんください。
開会挨拶
井上 勝美 氏
大分県 商工観光労働部
経営創造・金融課 課長
基調講演
宮地 繁彰 氏
株式会社事業承継パートナーズ
代表取締役 統括事業責任者
別府会場の開催レポートはこちら
■ トークセッション
テーマ:『経験者が語る! 第三者承継(従業員承継、M&A)のリアルと成功の秘訣』
 今回登壇したのは、佐伯の郷土料理として知られる“ごまだし”を製造販売する、株式会社漁村女性グループめばる代表取締役の小谷晃文(こたにあきふみ)氏と、久留米市を拠点にM&Aによって全国へタクシー事業を展開している、タクシードジャパンホールディングス株式会社代表取締役の木下和政(きのしたかずまさ)氏。
 小谷氏は、帰郷し転職した先で従業員承継を円滑に成功されたご経験と経緯について、木下氏は家業のタクシー事業をM&Aで広域展開してきたノウハウや第三者承継を成功させる視点について、それぞれの立場から経験に基づいた思いや考えをお話くださいました。
小谷 晃文 氏
木下 和政 氏
トークセッションの内容

登壇者の事業紹介
小谷:株式会社漁村女性グループめばるの小谷です。私どもは、先代社長の桑原雅子ほか猟師の奥さんが始めた会社です。佐伯市の郷土料理である「ごまだし」を製造しています。焼いた魚をほぐし、醤油・みりん・砂糖を入れた海鮮だしのペーストです。2004年に創立した会社で社歴は20年ほどになります。承継したのは2021年です。
木下:皆さんこんにちは。タクシードジャパンホールディングス株式会社の木下です。私どもの会社は、福岡県久留米市のタクシー会社2人が共同出資で立ち上げた会社です。ブランドメッセージは『タクシー業界に新しい航路を』。地域の垣根を超えたタクシーネットワークを作り、持続可能な公共交通社会の発展に貢献するという経営理念としています。個人的には、会社員時代に8年ほど大分におり、思い入れのある故郷に近い場所です。このようにお話できることを光栄に思っています。
宮地:小谷様は従業員承継をなさっていて、稀なケースです。ゆかりのない佐伯市で承継されたユニークな方だと思っています。また、木下さまはM&Aを何社もされていて、テクニックや問題点、実体験を伺いたいと思っています。
事業承継に興味を持ったきっかけや背景
子育てを機に転職 - 専門性を武器に「継ぎたい」
宮地:では、事業承継に興味を持ったきっかけや、背景を小谷様から伺っていきます。従業員として入社されて、その後事業を承継されました。先代の社長からはどのような形でお話があったのでしょうか。
小谷:私どもは、従業員承継ではありますが第三者承継に近いですね。以前に勤めていた会社では単身赴任が多く、子育てをするにあたって、退職して帰郷し仕事を探すという中で出会った会社です。面接の際に、先代自身が「後継者を探している」と話されていたので、正直なところ、見染めてもらえれば…とお試し期間のように働いていました。大学生の頃に、マグロの餌や味覚生理学という旨味に関する研究をしていたこともあって、自分の強みを生かせるだろうと思って入社させてもらいました。
宮地:実際に承継されたとき、奥様からの感想はどうでしたか?
小谷:妻は子育てをしながら単身赴任中も時短で勤務していましたし、翌年からフルタイムに戻らなければならないタイミングでした。私が佐伯市で仕事を探すことになり、せっかく転職するならやりがいや得意を生かせる方がいいだろう、と思ってくれていたようです。
妻は仕事を続けたかったし、お互いにとってちょうどいい選択だったのかなと思っています。
社長と従業員の関係から任せられる人に
宮地:実際に、承継の話を先代社長から聞いた時、どのように感じましたか?当初から、経営者や幹部になりたいと思っていましたか?
小谷:7月下旬に入社して、実際に「やる気があるなら継いでみない?」と話をもらったのが11月頃でした。そういってもらえるならば頑張ろうかな、という感じでした。
単にいわれた仕事だけをやるのはつまらないですし、何か新しいことにチャレンジしたいという思いはあったので。経営者というよりは新しいチャレンジをやる環境が整ったら是非、トライしたいと。
前職の時に、大手の養殖子会社によく出向させてもらっていました。経営ノウハウに関することはさせてもらっていたので、そのような意味でも面白味を感じていました。
宮地:現場もわかっていらして、経営計画なども詳しい。お会いした瞬間に「是非」という先代の反応だったのでしょうし、その直感は大事で、感覚的にスムーズにいかれた承継だと思います。先代が小谷さんを選んだ理由はどのようにお感じですか?
小谷:面接で初めて会った時、「研究者が来る=色白で眼鏡の人」と思っていらしたみたいですが、実際は違って良い意味でお眼鏡にかなったのかもしれません。
10年後の事業を見据えて - タクシー業界でM&A事業拡大
宮地:続いて、第三者承継買い手側経験者の木下様に伺います。M&Aに興味を持ったきっかけは?
木下:8年前に家業のタクシー会社を手伝うといいますか、経営に携わることになり、10年後の会社に向けてどうするか計画を立てていて、事業拡大を考えた時にM&Aが手法の1つかなと思い興味を持ちました。
実際に、自社で展開するよりも第三者承継をしたほうが良いと思ったということですか?
木下:考えたやり方は2つ。M&Aで大きくするか、自社でいろいろな事業を拡大するか。タクシーの場合、同じ地域でやっても売上の伸び率が望めない上にコストがかかりますので利益がでるかどうか。ここがポイントとなります。M&Aの方が同じ業種で手を付けやすいし、売上を伸ばしやすい。人材確保もできますのでメリットがあると考えました。
あとはコロナ禍がきっかけでしたね。地域に与える影響が大きい地域と小さい地域があって、その違いは大都市か中小地域か。大都市は人口が多い分売上も大きいけれど、外出自粛で出かけるシーンが減少すると売上に与えるダメージも大きくなります。同じ地域でタクシー会社を展開するのはセオリーですが、緊急事態があれば共倒れしてしまいます。
中小地域の秋田県に、新幹線が止まる駅の最寄りにある管理会社があるのですが、同エリアにあるタクシー会社は実質2社で、駅利用者が5000人と地域に根差した企業です。コロナ中も地元の足として、乗り合いなどをやっていらして影響が少なかった。その状況はこれからも起こりえるでしょう。
それとスケールメリットですね。2社ではコストカットに限界があります。現在16社ありますが、燃料や賃金が上昇していてもコストカットはもっとできます。例えば車両買い替えをする場合、動いていない車両があれば必要なところに動かせばいいですからね。
管理は統括し実務は現地に任せればいい
宮地:実際に私もM&Aに関わっていて、時代によって“流行り廃り”もありますが、事業選択として重要なファクターだと感じています。県外にも積極的に展開されていますが、管理面が大変ではありませんか?
木下:コロナ時にオンラインでのやり取りが増えて、その場所へ出張しなくても繋がれるということがわかりました。弊社では、社長や課長などキーマンとなって実務を回す人が現地にいます。経営管理は遠隔でも可能です。中小企業の多くは社長が経営管理をしているので、従業員が関わることは少ない。ですので経営管理の仕事は現地には置かず、実務は任せます。
ただ、責任者とのコミュニケーションは大事です。zoomができない責任者には教えるところから始めます。それでも不安は多いと思うので、月1~2回ペースで全国を回っています。常駐はできないものの、行った時に圧縮してコミュニケーションを取ります。電話で大体の用は済みます。一日中電話は鳴っていますね。
決算書を参考に会社の状況と相性を見極める
宮地:M&Aで売り手を探す条件として、経営状態などが基準となっていると思いますが、内部環境など他にどのような基準がありますか?
木下:本音は、新幹線が止まる駅で行きやすいところ。しかし、そんな好条件の話はなかなか来ないので、全国どこにでも行きますし、年間で40~50件ほど話はあります。実際に会いに行って、1~2社決まれば良いかなという感じです。立地はもちろんですが、中身の基準は、財務や収支が堅実な企業。決算書はその企業のキャラクターを表しますので、決算書がわかりやすいところは基本的にいいと思います。債務超過や複雑な形になっていることは多いですが、そこも改善できる可能性がありますので、基本的にはお話を聞きに行くようにしています。あとは、先ほど話をしたキーマンですね。実際に、キーマンがいなくてもなりえる人がいれば一番良いと思っています。
宮地:M&Aに長けていらして、上手くなさっていると感じます。私が関わった事例では、医院の先生の事業承継の話を医師の入院中に進めていたけれど急逝されて、「地域の人を守って欲しい」という遺書のような思いを継いで短時間で話を進めた事があります。取引の間に何度も泣くシーンもありましたが、特に、私が活動している九州地域のために引き継いで行きたいと思っています。
承継を進めるうえで悩んだこと、難しいと感じたことは?
会社の“これまで”をうまく引き継げるかに尽力
小谷:承継の話を頂いて数日考えした。会社の屋号「漁村女性グループめばる」のコンセプトとは真反対の人間ですし、「社長が変わって味・やり方が変わった」となってお客様が離れてしまうのは良くありません。どのようにキャラクターを担保するか考えました。
それと、人材確保ですね。浜のお母さんたちが起業して、私が承継する前にメディアでも取り上げられて販路が広がったのですが、次世代で恥ずかしがるお母さん方が増えてPR面が難しいという課題がありました。そこを担ってくれる人材をいかに確保するか。漁村女性グループを代表するような、担保をして味も変わらないという事を知ってもらい、安心してもらうのが重要だと思っていました。
宮地:親子間の承継で、子が継いだところ味も変わったという飲食店の事例も多々あります。雰囲気や味を維持するのは難しいと思いますが、味は無形のものですし、気づかないうちに消費者が感じたりということもあると思いますが…。
小谷:私は研究者ですので、しっかり観察したうえで「なぜこの作業をしているのか」など細かく話を聞いて、改善できそうなところは提案もしました。今まで勘に頼っていたようなところは数値化して、誰でも同じ味が作れるようにしています。
宮地:先代とのコミュニケーションは今でも取っていますか?
小谷:親子のような関係といいますか、親族内承継の雰囲気に近いかもしれません。先代が55歳の時に起業しその後18年間育ててきて、ある意味私は息子のような感じなのかな。会社を嫁にもらった感覚でいるのが一番良いのかなと。そのような関係でいます。
株式承継はスムーズに行われたか - 問題点や課題は
引継ぎ後も伴走をお願いし円滑にスライド
宮地:経営ビジョンや理念をスムーズに継がれて好事例だと感じます。
小谷:自分を押し出して会社を存続できればそれで良いですが、自分にとっては、先代が18年育ててきたものを継ぐ方が良かったので。「男性が継ぐなら名前を変えてもいいんじゃないか」と先代からも話がありましたが、逆に、味も働く人も作る人も変わりませんし、「会社の理念もすべて継ぎますよ」という意思表示のために「社名は残させてください」とお話しました。
宮地:社員や取引先の反応はいかがでしたか?
小谷:ちょうどコロナ期でしたし、取引先バイヤー等とはなかなかスムーズには行きませんでした。なので、先代に顧問として3年間残っていただいて引継ぎしていきました。伴走していただくのは非常に大事だと思っています。先代とはビジョンが同じですし、自分の娘のような会社で10年、50年と残したいという思いを持っていて、私も長く収益をあげられる会社にしたいという点では一緒ですので上手くいっているのだと思います。
入社した時点では合同会社でしたが、事業を継ぐうえで商工会のサポートを得て、株式会社化して株売買をするのが良いだろうということで、その流れで進みました。
宮地:すべてが上手くいった、全国でも稀な事例ですね。
価格面と企業スキーム 伴走者が最重要ポイント
宮地:続いて、木下さんに、交渉で難しいと感じた点や悩んだことなどを伺えますか?
木下:正直なところ、問題になるのは譲渡価格ですね。われわれは買い手側ですので安く買いたいし、売り手は高く売りたいわけですから。あとはスキームです。株に価値を換価するか、または退職金で出して株を抑えるか。他にやり方はいろいろありますが、一般的にはここですね。交渉の段階でどうやってすり合わせるかがキモといいますか、難しいところだと思っています。やはり「世の中金なんだ」と。
宮地:社員にしろ取引先にしろ、最後には人の姿が見えるといいますか、お金が大事だと思いますね。特に気を付けている点は?
木下:買い手だから売れ、売り手だから買え、ではなくお互いが対等だと思っています。その中で、一方的に価格の話をしてもキリがありませんから、紳士的に尊重して話をしていきます。伴走し信頼関係を作って購入できればいいですが、経営環境のスピードが早いので、時間はかけていられません。交渉の中で信頼関係を作るのが大事だと思います。
宮地:トップ面談を最初に行いますが、そこが一番大事なんですよね。
木下:トップ面談では、共同出資者の会長と2人で対応することが多いです。役割分担として、柔らかめが会長、真面目なところが私。会長は、雑談を通じて言葉遣いや人柄を見ます。私は真面目な話で、経営理念や譲り受けた時のシナジー、相手側の強みなど、理論的な話をするようにしています。
宮地:経営者の個性が出る間や雰囲気を感じながら面談をしているのでしょうね。かなり繊細な内容を話すので、役割を分けているのが手法なのだろうと感じました。売り手側から断られた際は、どのような点に配慮していますか?
木下:恋愛と一緒で、失恋の方が多いです(笑)。話をいただいて、トップ面談に進むのは半分程度。その後、交渉の段階でこちらからお断りする場合もあります。直接交渉ではなくコーディネートする仲介会社が入ることもあります。ただ、コーディネーターは、聞いた内容を漏らさずそのまま伝えるのではなく、やわらかく伝えて上手くやるのが大事です。本当は仲介任せにしたほうがいいのですが、場合によっては一緒に行ったり。売主が本当に困っているのは何かがポイントですので、代替案があれば提案したりもします。
宮地:私もそうですが、仲介業者の選定には気を付けていただきたいと思います。センターや商工会議所に相談すれば支援していただけますので、公共施設を使いながら進めるのがよろしいかと思います。
承継後の雇用維持はマストで
宮地:売り手から、ここだけは守ってほしい・引き継いで欲しいと言われた事例はありますか?
木下:絶対に言われるのは、従業員の雇用維持。売主の立場上、戦略とはいえ身売りのような感じに捉えられてしまうので「なぜこんな買主に引き継いだ?」と言われることもあるでしょう。長年かけて守ってきた会社ですし、従業員の雇用維持に務めてほしいとは必ずいわれます。そして契約には雇用維持を折り込みます。引き継いだ直後に辞めた方はほぼいませんね。
宮地:特に高齢者の方の雇用は難しいイメージがありますが、いかがですか?
木下:タクシーは特に高齢者ドライバーが多いですし、そのまま引き継いでいます。年齢的に危ないという時は諭しながら配置転換など考えますが、「結局ダメだ」という時もあるかもしれません。ただ引継ぎの直後にその話はしませんね。
宮地:経験がたくさんあってこそ、スムーズに進められているのだと思います。非常に参考になりました。私にも、債務超過など経営面でトラブルがあった経験がありますし、財務などは会計士の力を借りながら進めるといったことも大事ですね。
承継にあたって支援機関の支援を受けましたか?
先代が事前相談をしていたのがご縁に
小谷:弊社は、商工会を通じて事業引継ぎ支援センターのサポートを頂いています。売り手も買い手も相思相愛でしたので、大きな問題も何事もなくでしたが、スキームであったり、何をしたらいいかがわからない時に具体的な指示をしていただきました。
宮地:専門家や支援機関へ支援してもらうようになった経緯は?
小谷:私が相談する以前から、先代が「後任者がいないか」という話を商工会にしていた経緯があって。仮に承継するつもりでも、声に出さなければ誰にも伝わりません。そういった意味で、話をしていたことがあったので下地がありましたね。すぐに支援を受けられるようになりました。
宮地:特に印象的だったことはありますか?
小谷:株式会社にしたのは、事業をスムーズに継ぐうえで譲渡を進めてくれたことからでしたので、具体的で良かったですね。株式に関しても、一部は伴走期間中に継続して支払ったりと、しっかりフォローしていただきました。
M&Aは情報収集とスピードがカギの握る!
宮地:木下さんはM&Aを進める中で、支援をどのように活用されていますか?
木下:私どもにとって一番大事なのは情報収集です。情報が入らなければ相手に出会えません。探す方法としては仲介サイトで、バトンズなど大手仲介サイトがスタートとなります。それから、各県に引継ぎ支援センターがあるので登録して探していただきます。一番多いのは大手仲介センターの利用ですね。この3つで情報収集します。企業調査を何処までするか、ですが、仲介会社に頼みます。場合によっては社労士さんにもお願いします。弁護士や税理士を入れたりすることもありますね。譲渡契約の際、条件が複雑な場合やリスクになりそうな場合は弁護士にリーガルチェックをしてもらうようにしています。専門家は段階に応じて使い分けていますね。
仲介については、売主と買主双方の仲介に入る両手取引の場合と、別々の仲介会社がある片手取引のパターンがあります。
宮地:木下様のお取引で、支援機関さんから何か感想を言われたりすることはありますか?
木下:「検討と意思決定のスピードが早い」とは言われます。M&Aは契約までに1年くらいかかるんです。われわれは検討から意思決定まで最終譲渡まで3ヶ月、長くて半年です。経営環境が変わるスピードが早くなっている中で、1年なんてかけていられません。
宮地:優秀な経営者さんは意思決定が早いですね。遅くなってしまうと、結局まとまらない・譲渡できないことがあります。互いの人生がかかる内容ですから早急に決めるのは難しいですが、スピード感は重要だと思いますね。
契約締結はスタート - 承継後のフォローに期待
宮地:買い手にとってどんなサポートがあるとありがたいですか?
木下:M&Aがゴールではなく、継いだ後のフォローがあるといいですね。仲介会社もそこを知るべきだと思うんです。売主からすれば、仲介会社は交渉に関わっていて一番の信頼を置いていると思いますから「売買契約が整っておしまい」ではなくケアや橋渡しをしていただけると助かります。
宮地:契約はもちろんですが、承継後のほうが大切ですからね。情報収集が大事だといわれましたが、仲介にとってもそれは同じ。お互いの話を聞きながらコンセンサスを取るのは非常に難しいことです。代理人同士の交渉のほうが私としてはやりやすいし、親身になって取り組める印象があります。額面もフィーも大きくなりますから、慎重に、支援機関を探されると良いでしょう。
引き継いだ後の状況について
PR反響はやがて下火に - 売り続けるための商品開発
小谷:承継したのがテレビの影響で売上を伸ばした年で、ターニング期でした。その後は半減していましたね。厳しい状況でしたけれど、先代と商談会に出向いて販路開拓をしたり、営業方法を教えてもらえたのは良かったです。
1年目は余計なことをせず、継続にあたってリスクになるような課題の抽出に努めました。数字からリスクを感じたのは原料調達でした。昔は、年間通じて魚が欲しい時に市場で調達できていましたが、漁獲量は減少しシーズンによって波がありますので。原料をどのようにストックするか、その課題をつぶすために2~3年を費やしました。1年目は会社がどのような状況かを隅々まで把握する必要がありますし、継いで3か月でしたので、販路把握もなかなか難しかったです。
宮地:商品開発についてはどうでしたか?実際にどんな商品か教えてください。
小谷:先代がいらした時、「鶴見の魚をもっとPRしてほしい」と話していました。アイテムを増やせば在庫や原材料の確保といったリスクが生じるので、年間通じて原材料が調達できる商品を定番にしつつ、季節に応じた材料で数量限定商品を製造しました。季節商材があるお陰で、店舗では棚の前のほうに置いてもらえて、既存商品も良い位置に置かれるようになりました。一昨年からは、初めて知った方にも手に取って使ってもらいやすいように、使い切りサイズのパウチ商品を作りました。土産需要や手土産として、知っていただく機会を増やせる商品を作っています。
承継直後に不安を感じさせない - コミュニケーションが大事
宮地:木下様、引き継いだ後に取り組んだ内容やご自身が考える傾向を教えてください。
木下:引き継ぎ後は従業員が不安がりますね。賃金が下がるらしい・雇用を切られるなど言ってもいないことで不安をあおられてしまいます。私は「変わるかどうか1ヶ月間見ていて」と話をし、変わらないことで良い印象を持ってもらってからコミュニケーションを取ります。キーマンとなる責任者と一番にコミュニケーションを取れば、従業員にメッセンジャーとして伝えてくれます。とにかく不安解消に時間をかけて、管理者を教育、フォローしながら伝えてもらうことを最初に行いますね。
私が現地に常駐したとしても、結局は『よそ者』なんです。現地の人が管理者に立つほうがまとまりはいいですね。難しいことは何も言いません。管理者から悩み事が出た都度、考え方とやり方の物差しを作ってあげて、それを積み重ねると、彼らの中で物差しができて「社長ならどう考える」と動けるようになります。経営知識は後でもいいし、実務運営が円滑に回るほうが従業員にとってもストレスになりません。時には、マニュアルを作ってあげたり、理解を見える化してあげますね。
宮地:どんな業種でも、承継後に従業員が一斉に退職してしまうというケースが非常に多いです。木下様は従業員雇用について特に大切にしていることはありますか。
木下:いわゆる離職防止の話ですが、辞めないようにするためにどうするか。これは処遇や環境の改善だと思っています。会長も私も会社を支配したいわけではありません。やりたい人がいれば、任せたいんです。常駐する社長を考えていないので、「オーナー会社の部下は社長になれない・キャリアスペックが描けない」ではなく、現地管理者にも将来のポジションを描いてもらったり、生まれた利益はきちんと還元してあげる、成果を褒めてあげる。言葉だけではなく、ここはやはりお金です。スケールメリットの中で、利益をできる限り還元し処遇改善してあげるのが働きやすさ、モチベーションになるでしょうからね。
経験から得られたもの、伝えたいアドバイスを
小谷:それほどの経験はありませんが、良かったのは売り手と買い手双方が相手のことを考えていた点。これは大きいですね。同じ方向、ビジョンを見て、売り手は育ててきた会社がどうなるか。「愛着を持って業を続けてほしい」といった希望がある方ならば、そこで終わりではなく伴走していただくのも良いでしょう。買い手側の不安を払拭することにも繋がります。買い手側としても、何十年も経営が続くためのサポートをすると言ってもらえるのは大切ですし、お互いでビジョンを共有、作っていくのが大切だと思いますね。
木下:事業承継を考えるタイミングですが、買い手よりも売り手は「いつやるのか」を悩むと思います。答えは“今”ですね。経営環境のスピードと不透明感から、どの業界でも今を保てず、限界が来るスピードが早くなっているように感じます。大変になって相談するのではなく、タイミングは今だと思っています。悩むこともあると思いますので、そのような時に支援専門家を頼ったり、実際にM&Aをしている方と繋がって話を聞いたりして、前向きに考えるといいでしょうね。
主催・共催
主催
  • 大分県 商工観光労働部
    (委託先:大分県商工会連合会)
共催
  • 大分県事業承継・引継ぎ支援センター
 
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(大分県商工会連合会内)